これまで紹介してきたクリエイターは、自らが脚本や絵を描き、製作するといったスタイルで創作活動に取り組んできた方が多かった。しかし、今回紹介するクリエイターは、あくまでプロデューサー的な立場に徹しており、これまでのクリエイターとは異なるアプローチで創作活動に関わっている。作り上げたいと思う情熱と、それを実行に移せる行動力が生み出した創作集団『ちーむどらむすこ』代表小野よしき氏に製作活動などについてお話を伺ってみました。

≪小野よしき(ちーむどらむすこ代表) プロフィール≫
Profile 1974年生まれ。Web製作会社勤務を経て2005年にサークル「ちーむどらむすこ」を設立。プロデューサーとして企画、シナリオ、交渉などに日々奔走する中、アドベンチャーゲームテイストのドラマムービーをこれまで13本製作。うち6本はオンラインストアでダウンロード発売中。


―― 『ちーむどらむすこ』を設立したキッカケはどのようなことからでしょうか?

もうずっとゲームを作りたくて…というのも、幼いころからイトコの家なんかでX1とか8801のゲームをやっていて、アドベンチャーゲームがとにかく好きでした。自分でもMSX2とかPCエンジンのCDロム辺りはハマりまくってましたね。最近プレイできてないんですが、未だに昔やりたくて出来なかったのはとても気になってます。ライトノベル的感覚がとてもつまっていて、それに惹かれたんだと思います。

その後、PCを覚えてちょっとしたサイトのゲームに登録したり、PC雑誌に載ったりして行きました。ちょうどその頃、Web製作の仕事もしていたので、職場で延長上の物を作ったら楽しんでもらえたみたいで。今のスタッフはそこで出会った仲間が多いです。(実はかーずさんともその時、衝撃的な事件が……)

そんな感じでオタのまま過ごしていたらちょっとずつ仲間が増えたのでパーティーを組んでみました。スタッフはそれぞれデザインとか音楽とか色々な分野に詳しかったので補いながらできるんじゃないかと。

―― 製作体制についてお聞かせ下さい

Interview1 基本は一人で活動しています。でもやっていることは一人じゃできないことなので、Web製作会社の時に知り合った仲間がスタッフとして手伝ってくれています。企画・シナリオ・メインの製作(Flashへの組み込みなど)は僕がします。企画とシナリオを最初に作ってこの内容でいけるかどうか判断してもらうために、まずスタッフにメールで渡して、良い反応が返ってくれば製作を開始します。タイトルロゴなどはスタッフのデザイナーが作ってもらい、その他の絵や音などについては全て発注して、最後に僕の手元に戻ってきたものを組み込んでいます。自分発注のプラモデルをタミヤ的なメーカー(いわゆるプロの方々)で造形とか作ってもらって、組み上げるのが僕の作業ですね。

―― 作品の製作にはどのくらいの期間がかかりますか?

だいたい発売の半年くらい前から動き出します。最初の頃は脚本を書いたりしてますが、ダメになることもあるので、実際の製作は3ヵ月くらいになります。あまり大作を作っているわけではないので、短いスパンでなるべく出せるようになったら良いなと思っています。でもこの上なく未熟者なので、周りに見せて反応が悪くてボツになった脚本は山のようにあります(笑)。それでもボツになったところから拾い集めて、新しい脚本を作ることもあります。

―― 作品製作で苦労する点はどのようなところでしょうか?

Interview2 絵師、音楽、そして声優事務所などへの連絡関連ですね。色々言われますが、やっぱりキャスティングはいつも胃が痛いです。僕らみたいな個人製作はそもそも信用という部分がとても足りないので。協力してくれる事務所にはそれはもうキチンと何度も説明してご理解を頂いて出演してもらっています。また製作に協力する予定だった企業のトラブルなどでリリースが遅れることも昨年あったので、色々なところで気を使うことが多いです。

あと、配信方法・出し方が困っていたんですが、パッケージだとイベントメインの製作になっちゃうので、そこは自分達のスケジュールを切りたかったので、ダウンロード販売がメインになりました。アクセスメディアさんが協力してくれたおかげで同人販売以外の場所でも販売できているので、そういう意味では色々と助けてもらって何とか製作できています。

―― これまでの作品テーマにはラブコメが多いですが、何かこだわりがあるのでしょうか?

Produce いやらしい話なのですがお客さんに一番ウケが良かったのがラブコメだったんです。僕らが作品作りをやり始めた頃には、ファンタジーとかロボットものがあったんですが、配信後の反応はジャンルによって雲泥の差がありました。ファンタジーのようなジャンルは基本設定がしっかりしてないと上手くいかず時間的にも足りないので、1話完結でお客さんが見て楽しんでもらえるジャンルは何かと考えたら幼馴染みやダブルヒロインが登場するラブコメが一番かと。単純に好きだと言うこともあるんですけどね(笑)。

この手の作品で一番確立しているジャンルで18禁系があるんですが、それをやるつもりはありません。別にかっこつけてるわけじゃなくて、僕古いゲーマーなんであまりプレイしたことがなく、『エロゲ=高価』っていうイメージのまま手が出せなくて…。

ゲームもマンガもそれなりに見てるので、結構素晴らしいシナリオのゲームがあるのも理解してますが、Hシーンがネックです。稚拙なHシーンしか作れそうにないので、多分そういうのってエロゲだとハズレだと思うんです。エロい作品って本当にエロいから、そういうのを作れる人は尊敬します。だから僕らはそういうシーンを出さないで面白いのを作れないかなということに挑戦しています。

―― 声優さんを起用する理由についてお聞かせ下さい

Dvzk1 ゲームでもアニメでもシナリオがあるものは何でもだと思いますが、フルボイスドラマは役者さんの芝居があってこそ成り立つものだと思うので、それが生きる作品を作ろうと思います。自分の作品にさらに声を付加価値で入れてって思うクリエイターさんが結構多いかもしれませんが、ウチは基本は内容で楽しんで欲しいというのがあっても、声優さんに合わせてシナリオも台詞もバンバン変えますので、演じる声優さんが魅力的に見えればそれが一番です。それに見合うクオリティということで、絵師や音楽も人をひきつける力のある人(きんたろ冷蔵庫・きんたろ氏)やプロの奏者・音楽事務所に依頼してます。


―― プロの声優さんを起用するキッカケはどのようなことからでしょうか?

最初は宅録でネット声優さんにそういう掲示板なんかで頼んだんです。残念ながらこの時期はまだ収録環境が余りよくない時代だったので複数から音を頂くと機材によるクオリティの差がありすぎて……。調整がもう大変だったので、宅録作品は以降やっていません。

結局スタジオで録ることとなり、どうせそこまでやるならもうちょっと頑張って何とかプロに頼めないかと考えました。特に最初は代表である僕の意見が通りやすい環境だったので、作品にどうしても出てほしい人がいるとスタッフを納得させまして。何のツテもないなか、なりふり構わず連絡してなんとか応対していただいたのが俳協の増岡弘さん。そこから増岡弘さんの知り合いをご紹介して頂き、様々な声優さんとコンタクトすることができました。

最初にどうしても出演してほしかった増岡弘さんが仰られたんですが「アニメの半分は声であり、声優の芝居による部分は大きい」と言われました。僕らは元々声優さんの魅力ありきで企画進めてるんで、この意見に賛同しています。だから素敵で魅力的な人のお芝居をさらにクオリティ高く見せられるといいなと思ってメインの配役にプロの声優さんを起用しています。あとはやっぱり、僕が声オタなもんで……(笑)。

――  『ドヴォルザークの休日』では、ちーむどらむすこでは初となる主題歌が収録されました。主題歌が誕生した経緯や桃井はるこさん起用の理由などについてお聞かせ下さい

Dvzk_jkt 最初はゲームだけで作っていたので、歌ってもらう予定は全然なかったんですけども、前々からゲーム主題歌は僕個人本当に思い入れがあって夢だったんです。そのころちょうど音楽事業者を介して桃井はるこさんと改めて打ち合わせる機会があって、本編に出てもらっているのでオープニングも……とお願いしたところ、作品のニュアンスを汲み取った歌を作って頂きました。桃井はるこさんには本当に感謝しています。『Brand new music』は本当に素敵な、そして素直な気持ちで泣ける歌だと思います。アキハバラブレコード第1弾『るーじー・ぐーじー』のカップリングなんでよろしく!

―― 新作『トナリでキミがっ!』はどのような作品でしょうか?

Art_tnkm1 ネタバレもあるんで細かく内容は言えませんが、一応今回はノリとして少年漫画を意識しているので、前半の萌えから後半のアクション・コメディと盛り上げの構成も考えたつもりです。いつものノリにプラスして何か加えられないかなと考えたので他の作品よりも企画に時間がかかりました。絵師さんは少年漫画のイメージを詰め込めるという観点で「お嬢の浴室」というサイトのAYAさんにお願いしました。そしてヒロインは可愛らしく、これは井上麻里奈さんが普段封印しているという“超甘”な部分を出してもらいました。ご存知かーずさんが収録中にメロメロだったんで折り紙付きです。相手役の高橋広樹さんは僕らの作品には欠かせないヘタレでムボウな少年を熱演してもらいました。そして謎の美女、小清水亜美さん演じるキャラも本当にびっくりするほど弾けて貰いました。ちーむどらむすこっぽいカラーを出すために、声優さんには普段の役柄にはない役を演じてもらいました。声優さんの細かい雰囲気は僕より、各ライターの記事の方が細かくて面白いのでぜひサイトで見て貰いたいです。


―― 今後の製作予定についてお聞かせください

最初の販売物として出した『妹ふらぐ』・『妹るーと』というのがありまして、その後数本作ってるんですが、何を出しても紹介文だったり、感想だったり、ブロガーや2ちゃんねるの批評が「ああ、妹るーとんとこか」なんですよ(笑)。
Iwife2 「そんなに妹好きかよ!ああ、実は俺も大好きだよっ!」ってことで続編を作ることになりました。キャスティングや収録も終わっていて、斎藤千和さんはじめレギュラー陣に加えて、中原麻衣さん演じる新・萌えキャラクターも用意しています。続編なので今までのクオリティを保ったまま新しいお客さんを呼び込むのは本当に大変なんですが、アイデアを熟考した結果、今回はマルチエンディングを採用してみました。それから、その後にもう一本、これは本当にゲームのウェイトが高い作品を予定してます。もちろんクオリティはちーむどらむすこなんで、お好きな人はどうかお楽しみに!

―― 妹シリーズ第3弾の発売を期待しています。本日はありがとうございました

ありがとうございました。


<作品情報>
『トナリでキミがっ!』

Tonakimi ジャンル:フルボイスノベルゲーム
価  格:1050円 (税込み)
対応機種:Windows 98/ME/XP/VISTA, Macintosh OS X以降
キャスト:井上麻里奈、高橋広樹、小清水亜美、かねこはりい、
凪 佳二、鈴木さやか、武山政史、厳魔 臣
絵  師:AYA (お嬢の浴室)
発売日 :2009年5月1日(ダウンロードサイトで好評発売中)

ちーむどらむすこ