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極楽トンボ

ライト ノべルが読みたいっ 第十五回 『魂のラノベ!』

さてさて、ついにこの連載も今回で最終回を迎えることとなってしまった。長いようで終わってみればあっという間の連載だった。
さて、そこで最終回にふさわしい記事をいろいろ考える中、最初は普通にラノベ業界全体の総括でもしようと思っていたのだが……そんなベタな記事よりも、この際思いきり趣味に走ってみることにした。

絶版とか発売日とか関係なく、好き勝手に自分の魂のラノベを紹介!
一応私もこれまでの連載では、現在でもそのライトノベルが入手可能かどうかを考慮したり、あまりに趣味に走った作品はできるだけ選ぶのを自重してきた。だが、今回はオールタイム基準で手に入るかどうかも一切考慮せずにお気に入り作品を紹介させてもらう。まあ最後だからということで大目に見ていただきたい。
皆さまのよいラノベライフの一助になりますように。


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●アスリートの孤独を描く、おそらくは後にも先にも唯一のラノベ。
ginban1.jpg『銀盤カレイドスコープ』 (海原零/絵:鈴平ひろ/集英社スーパーダッシュ文庫/全9巻/2003~2006年)
フィギュアスケート選手の桜野タズサは、その比類無き容姿と毒舌、そして確かな才能を持ちながらも、本番に実力を発揮できないという最大の弱点を抱えていた。そんなタズサが、彼女に偶然憑依した幽霊ピートとの出会いをきっかけとして、才能を開花させていくスポ根である。
このシリーズのもっとも特異な点は、タズサの戦いがどこまでも孤独なことだ。ピートとの別離以降、タズサには真の意味でのパートナーは誰もいない。どこまでも一人で試合に対するプレッシャーと戦っていくことになる。その描写は強烈で、タズサが手痛い敗北を喫し、精神的にボロボロになったときに、吐瀉物をぶちまけたりしている。これを読んだ時には思わず「ぞわっ」と来た。こんなどん底から再び立ち上がるのも、周りが全く手を貸さなかったわけではないがあくまで自力だ。
良くも悪くも我が強い性格なので、タズサは国内のマスコミとソリが合わず、徹底的なバッシングにあっている。メディアをこれだけ敵に回すスポーツ選手(しかも主人公で!)は他に知らない。
タズサだけではなく、フランス代表選手で周りからは温厚な性格で聖人のように語られるガブリーが、タズサにだけ見せた、勝負に対するすさまじい執念なども特筆すべきだろう。

ラノベに限らず漫画も含め、多くのスポ根ではチームワークが重視される。一人だけでは勝負にならなくとも、みんなで力を合わせれば……というノリだ。そんな中で、徹底的に個人の戦いにこだわるこのシリーズは『アスリートの孤独』という、個人競技の本質と真っ正面から向き合った希有なシリーズと言える。


●ハルヒじゃなくて、ぜひこっちの続きを……
gakko.jpg『学校を出よう!』
(谷川流/絵:蒼魚真青/電撃文庫/既刊6巻/2003~2004年)

「涼宮ハルヒの憂鬱」で一躍ヒットメーカーとなった作家・谷川流だが、実は電撃文庫でも同時期にSFテイスト溢れる作品をスタートしている。それがこのシリーズだ。
超能力を発現させた学生が集められた学園・第三EMP学園。そこで起きる様々な事件に、学園で唯一なんの能力も持たない少年・高崎が関わっていくことになるというものだ。
時間跳躍、平行世界、未来人などといったハルヒの世界でも登場したSFネタが、もっとずっとシャープな形で扱われているのが特徴で、登場人物もハルヒシリーズに比べてはるかに濃い連中ばかりが出てくる。
個人的には『学校を出よう!』を読んだ後だと、ハルヒシリーズはぬるま湯のように感じてしまう。一応第一部は終了しているものの、こちらも物語としてはまだまだ完結していない。ぶっちゃけ、ハルヒシリーズのほうが遥かに売れているためそちらが優先されるのは道理というものだが、それは重々承知の上で、この際ハルヒはしばらく休憩したままでいいから、こちらの続きをぜひ読みたいものである。


●作者の復活を心から願っている。
『電波的な彼女』 (片山憲太郎/絵:山本ヤマト/集英社スーパーダッシュ文庫/既刊3巻/2004~2005年)
作者・片山憲太郎の新刊はここしばらくストップしている。原因について思い当たる節はあるが、事実かどうかは作者本人にしかわからないことなのでここではあえて書かない。事実としては、紅のアニメ化という追い風がありながらも1年以上新刊が出ていない状態だということだ。普通であれば1年程度間が空くぐらい、取り立てて大騒ぎすることではないのかもしれないが、個人的にエールを送りたいということでご理解いただきたい。
ただ最近になって、集英社の「ゆかた祭り」と連動したスーパーダッシュ文庫販促用の無料配布小冊子に『電波的な彼女』の短編が掲載されていた。枚数的には微々たるものだが、作者の復活の兆しかも?
上のような経緯があり、作品の世界観は同じであること、また作品の傾向としてやや猟奇的なサイコミステリとしての部分が個人的に好みなのもあるので、あえて『紅』ではなく『電波的な彼女』の新刊が出るのを心待ちにしている。
いっそレーベルの壁を越えて作者には活躍してもらいたいところだが、これは欲張りというべきか。


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ライトノベルが読みたいっ 第十四回 とことんラブコメッ!

さて、既にご存じの方もいると思うが、諸般の事情によりこの回を含め残り2回で、私の連載も終了となる。
名残惜しいが、悔いの残らないように書いていきたい。

さて、今回の特集はライトノベルの王道中の王道・ラブコメだ。バトルアクションが主となるものは今回は意図的に避け、日常のドタバタが中心となる作品に絞って紹介させてもらうことにする。
なお、今回は全く趣味に走ってないわけではないが人気作品の比重が高め。アニメ化も近い!?

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●執事にお嬢様が惚れるのは必然?
れでぃ×ばと!
ladybattle08.jpg上月司/絵:むにゅう/電撃文庫)
見た目は不良そのもの、だけど中身は割と常識人の秋晴。将来の夢を叶えるために選んだのは、お嬢様学校に新設された従育科。メイドと執事を育成するところだった! 上流階級から浮いた存在の秋晴は、お嬢様方やクラスメイトと数々の騒動を引き起こしながらも、持ち前の『実は割といい人』っぷりを発揮してなにげにフラグを立てていく……。
いわゆるハーレム系で、ヒロインはロリから某国の王女までそれはもうバラエティに富んでいるのだが、なかでも腹黒クレバー幼なじみと重度のツンデレ金髪お嬢様は、秋晴に特に熱を上げていて、ことあるごとに対抗しまくり、秋晴が毎度それに振り回されるのが特にみどころ。


●愛はノーマルじゃなくてもいい
mm8_cover.jpgえむえむっ!
(松野秋鳴/絵:QP:flapper/MF文庫J)
女性からの罵倒や暴力に快楽を覚えてしまう変態性癖を持つ少年・砂戸太郎が、M気質を直すために、生徒達の願いを叶えるという第二ボランティア部のS気質でやることが極端な美少女部長・石動美緒のもとで『治療』を受けるというもの。
あまりにも独創的な治療はいつも上手くいかず、その上太郎の周りは変態だらけ。太郎を籠絡しようとする母と姉、男に触られると反射的にぶっ飛ばす娘(でもちょっと太郎といい仲)、女装癖がある上に性格まで豹変する友人、太郎の恋のライバルとなる超絶マッサージテクを持つ『女』などなど、普通の人間がいないっ!
そのうえ第二ボランティア部に持ち込まれる依頼も、バレンタインデーを潰して欲しいとか無茶な依頼ばかり。こんだけ異端なのにちゃんとラブコメしてる非常に楽しいシリーズだ。題材がアレだが(笑)、もういつアニメ化されてもおかしくないパワーを秘めている。


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ライトノベルが読みたいっ 第十二回 “弱い”主人公が奮闘するライトノベルとは?

漫画やゲームなど他のメディアでも当てはまる話だが、ライトノベルに出てくる主人公というのはたいていの場合“規格外に強い”。一見役立たずに思えても、ほぼ間違いなく「実は王家の血筋」だの「偉大な魔法使いの血」だのといった隠れた、それも度外れた特殊能力によってピンチを脱してしまうことがほとんどだ。選ばれし王子様・お姫様願望は誰にでもあるので、そういうわかりやすさは当然と言えば当然なのだが、時には反則級の『特殊能力』ではなく、純粋に自分の力だけで奮闘する主人公を見てみたくなる。
今回はそういった『弱い』主人公のがんばる話を取り上げてみよう。
さすがに、ただの恋物語まで含めてしまうと際限がないので、今回はバトル主体の物語に絞らせていただく。

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●ハッタリに全てをかけろ!
masurao.jpg『戦闘城塞マスラヲ』
(林トモアキ/絵:上田夢人/角川スニーカー文庫)
あまりの凶悪な人相に、高卒後就職もままならずニートになってしまったヒデオ。生活費も底をつき、自殺寸前で偶々拾ったノートPCに住み着いていた電子精霊のウィル子と遭遇。明日のご飯のために、超大規模武闘大会「聖魔杯」にエントリーし、起死回生を狙うが……。
完璧にただのニートで、とりえは凶悪顔だけ。こんなヒデオがいかにして聖魔杯を勝ち抜いていくのかが見どころ。凶悪顔で相手に買いかぶられているので、それを利用してハッタリを仕掛け、電子精霊のウィル子の力も活用して相手をこっちのペースに引き込む手腕はお見事。直接戦闘力が売りの「大佐」を、コイントス勝負に持ち込むなどお手の物だ。それと、真にこのシリーズがすごいのは、一度ヒデオがただのニートで何の力もないと斬り捨てられた後なのだ!
このおそるべきハッタリは一見の価値あり。

●知恵で全てを解決
fuusennyannyan.jpg『封仙娘娘追宝録』
(ろくごまるに/絵:ひさいちよしき/富士見ファンタジア文庫)
足かけ14年でつい先日完結した中華風ファンタジー。仙人修行中に誤って人間界に師匠の持っていた727の欠陥宝貝(いわゆる魔法アイテム)の封印を解いて地上にばらまいてしまった和穂。責任を感じた彼女は、仙人を返上し、人間の身ですべての宝貝を回収するという困難な責務に挑む。
唯一欠陥宝貝の中で残った殷雷刀の助力こそあるものの、回収すべき宝貝は意思を持ち反撃してくる中、和穂は人間という非力な身で、知恵を駆使して回収を続けていく。宝貝は強大だが欠陥持ちという、この「欠陥」を利用して圧倒的な不利を覆していく和穂の手腕は見ていて気持ちがいい。どんな困難にあっても最後まで決してあきらめない鋼の意思あればこそだが。

●絶対にあきらめない!
sakurasaku.jpg『上等。シリーズ』
三浦勇雄/絵:屡那/MF文庫J)
ごく普通の高校生・五十嵐鉄平は、望みもしない異世界人のTV企画《薄幸少女を救え!》に巻き込まれ、両親を亡くしたばかりの少女・古都ゆかりを、それも生放送という都合で4時間以内に幸せにしろと言われるのだが?
勢い重視の疾走感溢れる物語で、とにかくめまぐるしく状況が動く動く。最初は単にゆかりを元気づけるだけかと思いきや、気がつけばテロが起こり、そこからゆかりを救い出すことに……。
毎回、異世界人の思惑に乗せられる形で、必要最小限のサポートを受けてはいるものの、基本は不干渉。ほぼ独力でゆかりをはじめとする自分の周囲の人間を救っていくその様子は非常に熱い! 頼れるものは掛け値なしに知恵と胆力だけなのだが、毎回のように死線をくぐり抜け最後の方では目を見張るほどの精神的な成長を果たしている。恋模様も基本的に直球勝負で、鉄平のその熱さにゆかりは陥落したと言えるだろう。

●ずっと迷い中。
baranomaria.jpg『薔薇のマリアシリーズ』
十文字青/絵:BUNBUN/角川スニーカー文庫)
ウィザードリィを彷彿させるダンジョン潜りアクションファンタジー。
華奢で女性のような印象を与える冒険者のマリアローズは、クランzooの一員。パーティ内ではもっとも弱く、仲間に護られることもしょっちゅうで度々マリアはその弱さに苦悩する。
なにげにzooのメンバーは実力の高い人間ばかりで、もともとコンプレックスだらけのマリアにはそれが苦痛になっている。「そんなことは気にしてない」とメンバーにも言われて何度も立ち直り、懲りずにまた挫折するという青春小説めいた部分があるのだが、自分が弱かったがゆえに慎重に状況分析をして立ち回る要領のよさと頭の回転の早さがあり、戦況を見てメンバーに適宜指示を出すという戦闘指揮者として自分の立ち位置を見出しつつある。弱いなら弱いなりに活路はあるのだ。

●今時の救世主はネットを活用
chisnakuninokyuseisyu.jpg『小さな国の救世主』
(鷹見一幸/絵:Himeaki/電撃文庫)
日本からお気楽な旅行のつもりが、とある小国の内戦の渦中に巻き込まれてしまい帰るに帰れなくなった高校生。おせじにも学校の成績や運動能力などが特に秀でているわけでもない彼が、その国の現実を目にしてなけなしの勇気と知恵をふりしぼり、インターネットのオタク知識人?を駆使して、政府軍に攻撃を受けている小国の少数部族を救う話。
何かネット上に流せばあっという間にリアクションが返ってくるネット時代ならではの虚構の英雄と言えなくもないが、最初はネットだけが頼りだった主人公に徐々に成長が見え、作戦を立てる際、自ら危険なところへ赴くことを志願したり、ネットのアイディア丸パクリではなくそれなりに自分自身で考えつつ行動するようになっていくところに注目。最後にはちゃんとお姫様から頼られるだけの見所のある男になっているのだ。

●魔法の成績は悪いけど……
john_pei.jpg『ジョン平とぼくと』
大西科学/絵:銀八/GA文庫)
人間には、動物の使い魔が必ずセットとして生活。人間の馴致によって使い魔の知能も上がっていき、最後にはほとんど主人である人間と同じレベルと思考形式と知性を獲得していくという世界の話。
そんな世界を舞台に、魔法があまり使えないみそっかすな少年・重と、使い魔としてはあまり見どころがない(ようにしか見えない)やけにのんびりした大型犬・ジョン平のコンビが奮闘する。
魔法の修行では思うように結果が出ず、女の子にもてるわけでもなく、精神的に鋼の強さを持つわけでもない重は、この世界ではむしろ軽視されがちな科学に興味を持っていて、大きなもめ事に巻き込まれて危機に陥った際に、魔法ではなく科学を利用してその場を切り抜けたりしている。これも知恵でなんとかする主人公と言えるだろう。
余談だが、恋愛的には割と切ないことになるのでその辺ご注意を。

●微妙な能力も使いよう!な主人公
これは種別的には特殊能力になってしまうのだが、ただし普段はイマイチ使い道のない能力で、工夫次第で化ける主人公ということで取り上げることにした。

yokuwakarugendaimaho.jpg『よくわかる現代魔法』
(桜坂洋/絵:宮下未紀/集英社スーパーダッシュ文庫)
なにもできない自分を変えたいと思って現代魔法の使い手・姉原美鎖に弟子入りした少女・森下こよみ。が、勉強が苦手という以上に彼女には致命的な問題があって、こよみの身体を通すとなぜかどんな強力なコード(魔法)も《たらい》に変換されてしまうのだ!
ドリフのコント(この例えはもはや通じない?)でおなじみの、頭上から落ちてくるアレだ。
時として水の入ったたらいも召喚できるとはいえ、攻撃力としてはいかにも頼りない。ただ、あらゆる魔法を全てたらいにしてしまうという奇特な力なので、上手いこと使えば一発逆転を秘めている。強いぞたらいすごいぞたらい。
kaguya.jpg『kaguya』
(鴨志田一/絵:葵久美子/電撃文庫)
ムーンチャイルドと呼ばれる一部の子供のみに発現する異能・アルテミスコードを持っているが、「自分の見えているものを他人と共有する」という使い勝手が微妙な能力の少年・宗太が主人公のボーイミーツガールな異能バトル。
これはヒロインの存在が超重要で、ヒロインのひなたは物理法則を無視した強力な重力支配のアルテミスコードを持ちながらも盲目の少女なのだ。このひなたと一緒になることで、二人の能力は跳ね上がるという仕組み。話的にも非常に絵になる、この二人三脚ぶりが光っている。あとはかなり頭の回転が早いので、運用の仕方でカバーするというところも忘れてはいけない。

●ライトノベル最新注目作チェック
swordart01.jpg『ソードアート・オンライン』
川原礫/絵:abec/電撃文庫)
第15回電撃小説大賞の大賞受賞作『アクセル・ワールド』の作者が、web上で公開していた作品をリライトしたもの。受賞作が2月に出た直後の刊行で、この新人への期待ぶりが伝わってくるが、強力に推されるのも納得の傑作だった。
五感全てを変換するヘッドギア式デバイスで、1万人が同時接続し、その世界に自分が存在しているも同然の感覚で遊べるという、剣でモンスターと戦う大規模オンラインゲーム『ソードアート・オンライン』。しかし、そのゲームにはある恐ろしい罠があった……。
生き残るため徒党を組む多くの人間に背を向け、単独行動し、ひたすら強くなることに拘るソロプレイヤー・キリト。彼は、ある時有名な女剣士にしてギルドの副団長・アスナからの強引な申し出で、なしくずしにアスナとパーティーを組むことになり、この二人をメインとして物語は進む。
剣による攻防で技を出した後に硬直時間があったり、あるいは日常シーンで釣りをすると数十秒で結果が出るなど、いかにもゲーム的な部分も描きつつ、ある理由から『絶対に死ねない』状況を強制的に作り出し、戦いへの緊張感を生半可でないレベルまで高めている。先が気になってページを繰る手が止まらなかった。

futari3_cov.jpg『この広い世界にふたりぼっちⅢ』
(葉村哲/絵:七草/MF文庫J)
冬のある日、真っ白な狼に突然求婚された少女・塚木咲希。お互い孤独を抱え集団生活を送るには異物として社会からはみ出た存在である一人と一匹の、“神話”めいた物語の完結編。
少々説明のしづらい内容なのだが……狼のシロは決別した仲間を平然と殺し、咲希もいじめを受けながらまるで心を動かしていなかったりと、非常に殺伐とした部分がある。加えてシリーズ中どんどん咲希は人間離れしていき、最後は世界の命運に関わる「一柱の女神」と渡り合うなどスケールの大きな話に。イラストの雰囲気とも相まって、目に浮かぶ光景が実に美しい“神話”だ。

anistomahoutukai.jpg『アニスと不機嫌な魔法使い3』
花房牧生/絵:植田亮/HJ文庫)
いつまでも若いままの容姿の呪いをかけられた凄腕の魔導士シドのもとに、孤児院育ちのゴーイングマイウェイ少女アニスが養子にやってきて引き起こす賑やかな魔法ファンタジー。
養父=素敵なおじいさま!と思いこんでいたアニスと対面したのは少年姿のシドでアニスはびっくり。
絶大な魔法の才を持ちながらも傲岸不遜で気が短いシドをははじめとして、常に前向きで明るく、人の意見を聞かずに突っ走るアニスが周りの人間に影響を与えていく様子が微笑ましい。魔法使いのビアンカとアニスによる女同士の「かしましい」やりとりも心地いい。読むと元気になれるシリーズだ。
突っ走りがちな少女にツンデレ魔導士(男)という構図は少女小説的な部分があって、女性にも楽しんでもらえるのではないかと。

tornerd.jpg『トルネード!』
(伊吹秀明/絵:四季童子/HJ文庫)
カポエラ少女がヒロインの、超能力とか一切出てこない、ガチな格闘アクションもの。ラノベらしい設定で、なんとブルマもスパッツもないままカポエラスタイル、つまり逆立ちして戦うのでおぱんつ大開帳! 表紙絵がおぱんつ見せ放題なのは内容を実によく表しているのだ。
内容的には、トルネードという二つ名の付いた謎のカポエラ少女が実は主人公の少年が住み込みで手伝いもしているところのお嬢さんだった、という導入からいろいろあって、校内最強を決める異種格闘戦へとなだれ込んでいくというもの。ただの挿絵サービス小説ではなく、格闘シーンは非常にきっちり描写されているので格闘小説が読みたい方にもおすすめ。

otome_na_bungu030.jpgオトメな文具。 初?修復
(淺沼広太/絵:なつきしゅり/ファミ通文庫)
始終女の子のことばかり考え、発言も欲望に忠実な少年・吉田は、とうとう美少女の多い高校に転校まで果たす。そんな中、吉田は怪人と戦う少女達と知り合うが、実はその少女達の正体は闘う文具・アニマテリアルズであり、吉田もまた文具を修理する特別な才能をもったリペアラーだったのだ!
基本はバトルもありなラブコメなのだが……文具少女が修理されてる時の描写が無駄にエロい!
戦いで傷を負い、ずれてしまった修正テープを巻き戻す時に「い、いやぁッ!! 入っちゃうッ!! いっぱいいっぱい入っちゃうよぉッ!!」という具合で実にわかりやすい。
また女の子に直球過ぎる発言の多い吉田と、それをいともたやすくばっさりあしらう女の子達の会話も楽しい。



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文・極楽トンボ(まいじゃー推進委員会)



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ライトノベルが読みたいっ 第十一回 食事シーンのおいしそうなライトノベルは?

ラノベで描かれる世界は、もちろん空想の産物なわけだが、基礎となるのは現実世界である以上、日常生活ではおなじみの『食べる』『寝る』『風呂に入る』といったシーンの描写がされる機会は数多い。
今回は、そんな中でも特に『食べる』ことに重点の置かれているライトノベルを取り上げてみよう。といっても今回は、コメディでは王道ともいえる『殺人兵器』な料理ではなく、みるからにおいしそうで思わず食欲が湧いてしまうようなものを取り上げることにする。

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bento.gifベン・トー』シリーズ
(アサウラ/絵:柴乃櫂人/集英社スーパーダッシュ文庫)
内容は、スーパーで売られている半額弁当を巡って激烈な争奪戦を繰り広げるとい う、コンセプト自体はいわゆるバカ小説なのだが、異様に戦いの描写が熱く、スポ根の域にまで昇華されている希有な作品だ。
扱う内容が弁当なだけあって、弁当を食べる前、そして実際に食べる際の描写の臨場感ときたら! バトル自体は絵空事でも、描かれる弁当についてはとことんリアルを追求しているのも重要だろう。
ちょっと豚の角煮弁当の描写を引用してみる。

“その弁当は梅干しが載ったたっぷりのご飯、柴漬け、多少電子レンジの影響でクタってしまったレタスに包まれたポテトサラダ、そして鮮やかに色づいた豚の角煮、そのブロック肉が三つというシンプルな代物だった。
この中で豚の角煮が洒落にならない匂いを発している。何とも言えない濃厚そうな醤油ベースの煮汁は豚の旨味と融合を果たし、香ばしさもまろやかさもその身に含んでいるのがひと嗅ぎでわかる。微かに感じる複雑な香りからさらに何かしらの香料が加えられているのが窺えた。タレの効能は香りだけではない。その照りは月光に煌めき、豚肉の脂身と赤身の重要な階層を高級感たっぷりに演出して見せている。”

食べる前からこれだ。食べた時の表現も想像がつこうというものである。
というか、この原稿を書いていて猛烈に豚の角煮が食べたくなってしまった。なにしろ題材が弁当なので、高級食材を使ったグルメ料理と違って、食べようと思えば(味のことはおいといて)手が届くのがありがたい。

curry_bu.jpg激辛!夏風高校カレー部(いもうと付)
(神楽坂淳/絵:君平ユウキ/集英社スーパーダッシュ文庫)
夏風高校のカレー部は名門。「全国高校カレー選手権」の優勝候補で、学食でもカレーを提供している本格派。が、決勝を前に選手が事故でダウンし、急遽幽霊部員だがカレー馬鹿の少年・桐野魁が代打出場することに……。夏風高校に勝機はあるのか!?

ものすごく簡潔に?言うと、美食漫画『美味しんぼ』の恋愛メイン回。カレーの味を追求しつつ、ラブコメもやってしまおうと、そういう筋立てになっていて、主人公と幼なじみの恋愛模様にもかなり力が入っている。
カレーという料理に絞り込んであるぶん、逆に拘りもかなりのもので、残念ながら作中に登場する個性豊かなカレー達の細かいレシピは載ってないが、おそらく小説の描写通りにカレーを作ったらおいしく食べられるはずだ。こちらは『ベン・トー』と違い、全体の雰囲気は終始落ち着いているが、やっぱり読み終わるとカレーが食べたくなるのは間違いない!

fortune01.gif『新装版フォーチュン・クエスト』シリーズ
深沢美潮/絵:迎夏生/電撃文庫)
実は出始めの8巻くらいまでしか読んでいないので、本編が最近どうなっているのか全くわからない状態で、この紹介を書くことをお許しいただきたい。
コンピュータRPG仕立てに描写したファンタジー小説の草分け的存在。駆け出し冒険者でマッパーの少女・パステルが、仲間とパーティーを組んで、お宝探しをする話。敵と戦っている最中に、冒険者カードからメロディが鳴り響き「レベルアップ」して、体力や魔力があがったり、怪我を負っても薬草を使えばその場で治ったりと、ゲーム的な描写が各所でされているため、ゲーム世代にはとっつきやすい。
さて、これは作中に料理・食事シーンがとにかく多い!(どれくらい多いのかは、フォーチュン・クエスト&デュアン・サークのお料理集が参考になる)
作中どころかわざわざ巻頭のカラー挿絵で、宿屋のおすすめ料理の紹介をどどーんと載せたり、他のラノベには類を見ない執着っぷりである。このシリーズに出てくる料理は材料などすべて架空のものなのだが、作中に簡単レシピが出てきたりして、これがまた実においしそうなのである。読んでるうちに、思わず架空の食べ物だということを忘れそうだ。
「猪鹿風ミケドリアの木の実詰め定食」(ナッツ類と香りの野菜をきざんだものをミケドリアのモモ肉でつつみ、コンガリとスパイスをきかせて焼きあげたもの。セットで麦パンとコーンクリームスープつき。55G)や、「マトマカニのピリ辛サンド」、「忘れられた村の忘れられたスープ」などなど挙げ出すとキリがないのでこのくらいにしておく。

yuunagi.jpg『夕なぎの街』シリーズ
(渡辺まさき/絵:山田秀樹/富士見ファンタジア文庫&HJ文庫))
富士見ファンタジア文庫からシリーズが2冊、HJ文庫から同一世界観・同一キャラによる実質的な続編として1冊『ゆうなぎ』が出ている。
近代和風ファンタジーというライトノベルではあまり見かけない世界観。主人公は小料理屋をまかされていて、それを生活の糧にしつつ、錬金術師としても切磋琢磨中で、意思を持った自動人形を創ったり、ゴーレムとやりあったりもするのだが、全体として非常に地味で落ち着いた作風になっている。
で、お酒をいっぱい引っかけつつおいしい料理をつまむシーンが度々出てくる。まかない飯のシーンが多いが、それが実においしくみえるように描写されているのはもちろん、和風で落ち着いた雰囲気との相乗効果で、この作品を読んだ後には、思わずお酒とつまみがほしくなることだろう。
参考までにまかない飯を用意しているシーンを引用しておく。

“まな板の上に、小鯛の頭を立てて置く。広がった胸びれと腹びれを出刃でたたいて切り、前歯の間に刃をあてた。包丁の背に手をあてて体重をかけながら、鯛の頭を二つに割る。熱湯をかけて鱗をはたきおとしてから、沸かした小鍋に醤油と味醂を入れ、割った鯛の頭を放りこんだ。さらに、余り物のおろし生姜を気前よく入れる。醤油と味醂と生姜の煮立つ甘い匂いが厨房に広がった。適当な残り物の野菜を、沸いた小鍋に入れて煮込む。小さいから、食べる身はほとんどないが、鯛の頭ならよいダシがとれるはずだ。”

jikuunoxroad.gif『時空のクロス・ロード』
鷹見一幸/絵:あんみつ草/電撃文庫)
不思議な老人によって平行世界に飛ばされた主人公。そこでは、三日熱と呼ばれる伝染病によって、人類が多数死に、文明が崩壊して原始的な生活を余儀なくされる厳しい現実が待ちかまえていた……。巻によって主人公が異なったりするが、いずれも元世界の知識や物資なども利用しながら、平行世界の住人にも勇気と希望をもたらしていく話である。
で、この物語の重要な鍵となっているのが……実はカレーだ。
文明が崩壊したために、カレーのような料理とは無縁の荒んだ生活を送り、心もねじまがっていた少年達に、おいしいカレーを食べさせてなんと更正させてしまうという展開がいずれの巻にも共通しているのだ! まさに『おいしいものを食べて世界を平和にしよう』を地でいく話である。
1巻は2000年に出ていて移り変わりの早いライトノベルでは既に過去の作品と言えるが、このカレー食べて全部解決という展開で、未だ強烈な印象を残している。

この他にも新しいところでは『ばけらの!』(杉井光/絵:赤人/GA文庫)がやはりなにげに食事シーンが多かったり、2巻ではどこでどう展開がねじ曲がったかラーメン対決が展開されたりするので、チェックしてみるのも一興だ。
単に食べてばかりいる作品を挙げるともっとたくさんありそうだが、日常誰もが慣れ親しんだ行動だけにごまかしがきかず、ハードルが高いのか『おいしそう』という条件を満たす作品は限られてくるために今回の紹介はこんなところで。

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●ライトノベル最新注目作チェック
(対象作品:2月11日~3月10日発売分)

6jyouma.jpg『六畳間の侵略者!?』
健速/絵:ポコ/HJ文庫)
主人公の少年・コウは、高校入学に当たり、月5000円という破格の家賃でアパートの一室を借りる。実はこれが曰く付きの物件で、幽霊の少女・早苗が現れ先住民としてコウを追い出しにかかるのだが、なぜかコウには姿が見えるうえに触ることもできるため、恐怖を感じず、早苗の脅かしは不発。かくて二人で部屋を巡っての争いが勃発する。
さらに、コスプレ少女?や地底人などが次々6畳間に現れ、全員がこの狭い部屋の所有を主張し合って泥沼の激しい争いが繰り広げられるコメディだ。狭い6畳間限定で、過剰な戦力をぶつけ合うドタバタは、ベタながらも非常に楽しい。

aruhikuushi_cov.gif『とある飛空士への恋歌』
(犬村小六/絵:森沢晴行/ガガガ文庫)
web上でもかなり話題になった前作『とある飛空士への追憶』の続編ともいえる作品。ただし、前作の世界観は引き継いでいるものの、登場人物は一新されており、こちらから読み始めるのも可能だ。
皇家に搾取され続けた民衆が蜂起し、革命によって皇家が打倒されるという、激動の時代を背景に、順風満帆な人生を狂わされてしまった少年・カルエル。
気のいい育ての親に引き取られたことがきっかけで、飛空士を目指すことになるが、カルエルは革命で人生が狂わされ親を失った復讐を諦めたわけではなかった……。
実際に読み始めると、空を翔ける豊かな情景描写に引き込まれる。初々しい恋模様もあるのだが、そこにカルエルの鬱屈した感情も交じり、果たして続刊ではどうなっていくのか非常に先が気になる展開だ。

kaichonokirifuda.jpg会長の切り札 忍者ガールで罠をはれ!
鷹見一幸/絵:KeG/角川スニーカー文庫)
同じ市内にある共学、男子校、女子校と装いや校風の全く異なる3校が統廃合の対象になってしまい、存続か廃止かを、当事者である高校生同士の現代風戦国バトルで決着をつけようというアクションだ。
敵の裏をかき、奇策で逆境をひっくり返す、という鷹見作品の基本スタイルを踏襲しつつも、題材が身近で、等身大の高校生が知恵を絞る展開によって、非常に物語がとっつきやすくなっている。逆境をひっくり返す手段が、異能などではなく、「がんばればなんとかなりそう」なレベルになっているので、まるっきりの絵空事ではなく「あったらいいなあ」と思わせるところがポイント。ウブなカップル達のなかなか進展しない有りようにじれるラブコメ部分の楽しみも大きい。

hurtless.jpg『HURTLESS/HURTFUL』
清水マリコ/絵:田倉トヲル/MF文庫J)
駅のホームから転落した女性を救って、代わりに自分は意識不明の状態となってしまった兄。そのせいで一家はマスコミに追われ、学校でも居心地の悪い思いをしている少年・待中玲夫は、「兄の心の中から脱獄してきた」と主張する変な少女と出会う……。
この不思議な少女や、近所の同級生である蓉と日常を過ごしていく内に、兄の人助けについてとある疑惑説が噂されるようになり、事態は意外な方向に。ちょっと不思議で、そしてほろ苦さも残るとらえどころのない青春の一ページを見事に表現した作品だ。


amagami.jpg『あまがみエメンタール』
瑞智士記/絵:鍋島テツヒロ/一迅社文庫)
ガチ百合作品で、その上特殊な性癖によって繋がれた共依存関係を扱っているので、読者を選んでしまうのは避けがたいが、ジャンル買い読者以外にも、良質な物語を求める方にぜひともご一読いただきたい。
全寮制の小中高一貫校、青嵐女学院。ロリータファッションに身を包み、精神的に幼く不安定な少女・莉子は、ルームメイトの心音を『噛む』ことで安定するという奇妙な性癖を持っている。長年この儀式を続ける内、心音も噛まれることに快楽を覚えている。幼い時に始まったこの歪んだ関係を、幼稚部、初等部、中等部……とずっと描写していくことで彼女たちの関係と、それがどんな結末を迎えるのかを描いた切なく優しくそして歪んだ百合な青春模様。外界と隔絶された寮生活ならではの秘め事という雰囲気を存分に漂わせている。
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文・極楽トンボ(まいじゃー推進委員会

ライトノベルが読みたいっ 第十回 少年系ライトノベルの表紙絵に男は 「いらん子」なのか!?

ある程度少年系ライトノベルを読んだことのある読者ならば、誰もが一度は思ったことがあるのではないだろうか。「ラノベの表紙絵って女の子ばっかりじゃないか?」と。
今回は、そういう漠然とした印象が果たして本当に正しいのか? と疑問に思い、実際に調査してみた。2008年に発行されたライトノベル約600作品を調査した結果、だいたい以下のような内容が読み取れた。
※調査の詳細については最後に記載する

●圧倒的に男性主人公の作品が多いが、その大半に主役は不在。
全606作品の中で男性が主人公なのは470作品。そのうち279作品で主役の姿は表紙にない。
残り191作品には載っている……と言いたいが、実はこれが数のマジックで、主役がSDキャラ化しているものが非常に多かった。今回、時間の都合でSD化の有無までは集計できなかったがそれを加味すると、さらに主役不在の傾向が強いことが分かる。

「いらん子」扱いされているのは気のせいではなかったのだ!
主人公なのに。


syana.jpgnogizakaharuka.jpgなお、形の上では男性が主人公だが、タイトルにはヒロインの名前がつくというパターンが圧倒的に多い。『灼眼のシャナ』や『乃木坂春香の秘密』などなど。これもきちんと調べると、ますます男性主人公の存在の薄さが明らかになることだろう。

裏付けとして、男性主人公の作品でメインヒロインが表紙に載っていないものは90作品のみ。全体の2割以下だ。調べれば調べるほど女の子絵あってのライトノベルなのだと言うことが分かる結果となった。

●女性主人公は優遇される
反対に女性主人公110作品中、主役不在は20、登場しているのは89作品と圧倒的に男性と扱いが違うことが分かる。さらに、主人公が登場してない大半はシリーズが長期化したり、短編集などの特別な内容のため他のヒロインに華を持たせている場合がほとんどなのだ。

男女格差おそるべし。


●女の子のピン立ちは本当に多いか?
ookami.jpg『狼と香辛料』や『涼宮ハルヒの憂鬱』などが有名だが、ラノベには女の子が一人で立っているデザインの表紙が多いという印象があるのだが、実際はどうだろうか。
主人公の男女別は問わず、女の子がピンで立っている表紙を集計してみた。(こちらは内容の判別できなかった作品も加えて全657作品で集計した)
167/657作品=25%という結果になった。
さらにレーベル別の偏りがあるかどうか見てみた。

GA文庫 HJ文庫 MF文庫J 集英社スーパーダッシュ文庫 角川スニーカー文庫 ファミ通文庫 電撃文庫 富士見ミステリー文庫 富士見ファンタジア文庫 13/ 71作品=18% 04/ 51作品= 8% 32/ 76作品=42% 17/ 62作品=27% 09/ 50作品=18% 14/ 61作品=23% 54/151作品=36% 04/ 09作品=44% 20/126作品=16%

ほぼ休止状態の富士見ミステリー文庫は別にして、MF文庫Jが突出している。MFは他のレーベルに比べて、ラブコメに傾倒していると個人的には判断しているが、それと関係があるのかもしれない。逆にHJ文庫は女の子のピンの割合がかなり少ないが、後発ゆえ意識して変化をつけているのか、はたまた女の子依存度が低いのか、なんにしろその理由をあれこれ考えてみるのもおもしろい。

●さらに男は「いらん子」か検証する
試しに男性主人公の作品で、メインヒロイン不在、男性が一人以上表紙に登場している作品(つまり、ほぼ主人公が表紙に登場しているとイコールで考えてよい)を調べてみると、全部で34作品だった。ヒロインに頼らず、存在感を出すのがなんと難しいことか!
ちなみにうち6作品は女装 or 性転換ものなので見た目は少女であることを付け加えておこう。

この他にも読み取れる内容があるかもしれないが、キリがないのでこれくらいにしておこう。少なくとも憶測ではなく、ラノベの表紙絵で男性の扱いの軽さについてはおわかりいただけたかと思う。せっかくなので少女系ライトノベルについても調査してみると、さらに興味深い結果が出てきそうだが、それは機会があればということで……。

調査対象は2008年1年間に出版された少年系ライトノベルのうち、電撃文庫、富士見ファンタジア文庫、MF文庫J、角川スニーカー文庫、ファミ通文庫、集英社スーパーダッシュ文庫、GA文庫、HJ文庫とした。この中で内容を把握できなかったもの、及びノベライズを除外した606冊が有効調査数となっている。調査者は全て極楽トンボ個人による。一部のレーベルについてはマンパワーの限界により調査できなかったことをお詫びしておく。

調査内容は、各作品を種別(男性が主人公、女性が主人公、群像劇[分類不能])、表紙絵に載っている人数(1人、2人、3人、4人以上)、表紙絵内に主役が載っているかどうか(いる、いない、不明)、表紙絵内に主役の対となるヒロインもしくはヒーローが載っているかどうか(載っている、載っていない、不明)、表紙絵内に男性は何人乗っているか、の5項目についてカウントした。
このうち表紙絵内の、主人公、及び相方が載っているかどうかは調査者の判定によるため、一部に判定間違いがある可能性があるがお許しいただきたい。

●男性主人公の作品は470、女性主人公の作品は110、群像劇など判定不能が26。
●表紙絵に載っている人数では、1人が264、2人が205、3人が83、4人以上が54。
●主役が載っているかどうかでは、載っているが303、載っていないが260、判定できずが43。
●相方が載っているかどうかでは、載っているが147、載っていないが412、判定できずが47。
●表紙に載っている男性の数は、0人が358、1人が189、2人が41、3人が16、4人が1、5人が1。


●ライトノベル最新注目作チェック
(対象作品:1月11日~2月10日発売分)
lowcube.jpg『ロウきゅーぶ!』 (蒼山サグ/絵:てぃんくる/電撃文庫)
メイドさん風の萌えイラストが表紙であるし、タイトルを見ても想像がつかないかもしれないが、実はれっきとしたスポ根。人気絵師によるイラストと適度にゆるいストーリー展開で敷居を下げて読みやすくなっているが、中身は熱い!
スポーツ特待で高校に入りバスケ部に入部した矢先に、部長のロリコン疑惑でバスケ部は1年間の活動謹慎になり、自分の立ち位置を見失って腐る主人公・長谷川昴。そんな昴は、従姉のミホ姉から「小学校の女子バスケ部のコーチを1週間してほしい」との依頼を受ける。ロリコン絡みで痛い目に遭ったばかりというわだかまりもあって、最初はコーチ役を固辞するが、心底バスケが好きという共通意識で、最初は距離のあった少女達とも通じ合っていく。限られた時間の付け焼刃なので、正攻法はもちろん、あらゆるうさんくさい手も使ってチームを勝利へと導く、楽しみつつ熱くなれる物語だ。

praraba.jpg 『パララバ -Parallel lovers-』パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)
(静月遠火/絵:越島はぐ/電撃文庫)

彼が死んで自分の生きている世界と、自分が死んで彼が生きている世界。二つの平行世界を繋ぐのは携帯電話のみ。二つの違う世界では、細かい点は違ってもほぼ同じ出来事が起こっていくという設定を非常に上手く生かしている。
非常に緻密に構成された作品で、次第にいくつもの謎が明らかになり、いくつも蒔かれた伏線が徐々に収束していく様はお見事。特に中盤以降、携帯電話だけを頼りに細い糸で繋がった二人が、それぞれ助け合いながら行動していく様は圧巻と言える。恋人でありながらも出会えない二人という、切ない青春ストーリーであり、同時にミステリー的な展開も秀逸。ストーリー重視派には特におすすめ。

gentenkaiki.jpg『原点回帰ウォーカーズ』 (森田季節/絵:深崎暮人/MF文庫J)
変人奇人が多く通う私立御伽坂学園。中でも学園の十哲と呼ばれる面々は、天才にして変人の頂点を極めている。そんな十哲の一人で学園の平和のために戦い続ける男・山崎章夫と、「当局」の一員として日夜様々な難事件の解決に奔走する少女・足利アキラの奮闘ぶりを描く学園アクション、なのだが……どこかが変だ。
序盤でいきなり山崎が●●(ネタバレ自主規制)になってしまったり、唐突に宇宙人が出てきたりと、予想のちょっと斜め上を行く展開が積み上がって、独特な味わいになっている。変と表現したが、学園物としての軽快な楽しさはしっかりあり、かなり気持ちいい読後感のある作品になっている。

karamitynight.jpg『カラミティナイト-オルタナティブ-』高瀬彼方/絵:ひびき玲音/GA文庫)
過去にハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズから出版されていた『カラミティナイト』のリライト。
内気な性格から中学でイジメを受け、高校で心機一転頑張ろうとするも、やっぱり内気で、読書とネット、創作小説を書くことが趣味の少女・沢村智美。かたや社交的、活発、スポーツ万能、けれどネットとギャンブルも好きという少女・櫻井優子。そんな二人は入学早々意気投合し親友として学園生活を送るが、ある日、すべての人間とのコミュニケーションを拒絶する謎の少女・ホリィが転校してきた時から、徐々に智美の日常に暗雲が立ちこめ、ついにある日……。
ジャンルとしては異能バトル。ネット上にアップした創作小説が原因で起こる炎上という精神的にきつい展開もあるが、それに負けない智美と優子の二人の堅い絆を、細やかな心理描写によって描き出している。

gyaruge_youkoso.jpg 『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』 (田尾典丈/絵:有河サトル/ファミ通文庫)
ギャルゲの世界が現実となった時、ギャルゲお約束のフラグ立てを進めたら、果たしてどうなってしまうのか?という誰もが一度は考える疑問を形にして見せた作品。
主人公がいたずらとしか思えない変なメールに返信したところ、世界が改変され、台詞や些細な選択肢もすべて覚えているほどのめり込んだギャルゲ「エターナルイノセンス」のキャラ達が現実の存在に!
このストーリー展開の仕方がポイントで、あるヒロインのシナリオを進めた場合、ゲームだと好感度の低い他のヒロインが出てこなくなってしまうが、現実的にはいきなり存在感が薄くなるというのはあり得ないのでは?という、描写されていない部分の齟齬を形にしているのがおもしろい。
病弱少女のイベントなどは、やられた!と思わせる仕掛けだった。ギャルゲーマーに特におすすめだ。

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文・極楽トンボまいじゃー推進委員会


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